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切りくずが燃えることなく、ドライカットでバリバリと削る。板材が割れることなくプレス加工で70mmの深絞りをする。これは今回のコンセプトゾーンで見ることができるマグネシウム(Mg)合金の実演加工(下記掲載の写真)だ。これまでの弱点を克服した次世代Mg合金が、コンセプトゾーンに集う。「Mg合金は燃えやすく割れやすい。だから切削加工は危険で、成形加工をすると割れてしまう」。そういったイメージや性質があるため、さまざまな産業で軽量化の研究が進められながらも、実用金属で最も軽いMgは広がることがなかった。しかし、そうした弱点を解消した合金が誕生したら、さまざまな部品の軽量化に大きく貢献できるのではないだろうか。その合金こそが、1000度以上に熱しても“燃えない”「KUMADAIマグネシウム合金」とプレスしても“割れない”住友電気工業の「AZ91板材」だ。下記からは、KUMADAIマグネシウム合金を開発した熊本大学の河村能人教授に、Mg合金の特徴と可能性について聞いた。

河村能人 インタビュー

軽量化で注目されるMg 切削加工のハードルを下げる

米国連邦航空局(FAA)は構造部材の軽量化を図るため、マグネシウム(Mg)使用禁止令を改定する燃焼試験法を策定した。これまで、Mg合金の民間航空機への使用を禁止していた。理由は発火しやすいからだ。その試験をクリアしたのが、熊本大学先進マグネシウム国際研究センター長の河村能人教授が開発したKUMADAIマグネシウム合金だ。強度があり、難燃性にも優れることから、さまざまな企業から注目を集めている。今回のコンセプトゾーンでは、その燃えないMg合金の切削加工を披露する。河村教授は「今回の実演で、今までのイメージを覆し、切削加工のハードルを下げたい」と意気込みを語ってくれた。

――河村教授の開発したKUMADAIマグネシウム合金とはどのようなものですか。

 まずKUMADAIマグネシウム合金には「耐熱合金」と「不燃合金」の2種類があります。耐熱は、長周期積層構造と呼ばれる新しい構造を持つことで、強度を持ちながらも燃えにくい合金になりました。不燃はアルミやカルシウムを混ぜることで、Mgが沸騰する1091度を超える熱を与えても燃えなくなりました。
昨年、FAAに燃焼試験を依頼し、4分間バーナーであぶっても、KUMADAIマグネシウム合金は2種類とも燃えることはなく、燃焼試験を容易にパスした。その後、ボーイング社との共同研究を開始し、耐熱Mg合金の実用化を目指しています。

――Mg合金はどのような用途で使用されるのでしょうか。

まずは、軽量化を目的とした、動く物や持ち運ぶ物などの構造材です。航空機や自動車、鉄道車両のフレーム、工作機械で使用されるプーリーやロボットの骨格で注目されています。
軽いため、他の素材よりも曲げ剛性を高くできるのも利点です。例えば、平板の場合、一般的なMg合金をアルミと同等の曲げ剛性にするには15%厚くする必要があります。しかし、それであっても重量は30%軽くできます。
また、生体材料への使用も考えられています。Mgは人体に含まれる金属では4番目に多い物質です。そのため親和性が高く、アレルギーになりにくい上、徐々に体内に吸収されます。血管を広げるステントや手術時のクリップなどの研究が進んでいます。

河村能人河村能人プロフィール


――Mg合金に欠点はないのですか。

 耐食性が良くないことです。しかし、近年では徐々に解決しつつあります。急冷法で作製したKUMADAI耐熱マグネシウム合金(急冷耐熱Mg合金)は、旅客機の構造体に使われる超々ジュラルミンの2倍の耐食性を持ちます。ただし、異種金属との接触による電食はどうしても発生してしまうため、電気が流れない工夫が必要です。
   それから値段が高いことも欠点に挙げられます。使用用途がまだ少ないため、市場が確立されておらず、大きい素材を大量に作るノウハウも持っていません。加えて、市場に普及していないので、リサイクル技術も確立されておらず、コストが高くなってしまします。
   また加工性が悪く、板材やパイプ材になるとさらに高くなります。板材などは溶けた素材を型に流し込めばできると思われがちですが、一般的なMg合金は燃えやすいため大気中では火が付く可能性があります。そこで、防燃ガスを吹きかけながら作業します。一方、KUMADAI不燃マグネシウム合金(不燃Mg合金)の場合は、大気中でも燃える心配がないため、市場さえできれば製造コストを抑えられるはずです。さらに市場が大きくなれば、研究開発がさらに進み、今よりも安く素材を提供できるようになります。

――Mg合金の市場を大きくするためには、やはりターゲットは自動車産業ですか。

 もちろん自動車産業も重要です。しかし、エンジン部品などの付加価値の高い場所にはいいかもしれませんが、まだコストが合いません。だから、今は航空機産業に力を入れています。
 冒頭でもお話しましたが、熊本大学は昨年10月から、ストリンガーと呼ばれる機体の強度を保たせる部品や内装品への耐熱Mg合金の実用化を目指し、ボーイング社と共同研究を進めています。急冷耐熱Mg合金は、超々ジュラルミンよりも高い強度と耐食性を持ちます。さらに、同等の伸びを持ち、疲労強度も高い。置き換えることで、強度を落とすことなく軽量化ができます。締結部の電食を抑える研究も進んでいます。

――夢の合金ですね。どのようにして開発に至ったのですか。

 Mg合金の研究を始めたのは1999年からです。それまでは別の研究をしていました。39歳までは、自分がMgに関わるとは思ってもみなかったです。
 強度のある合金を作るため、相性のいい合金元素を地道に混ぜ合わせました。それで生まれたのが耐熱Mg合金。そして、別の添加物でさらに研究を進めてできたのが不燃Mg合金です。強度が弱く、燃えやすかった従来の合金の弱点を両方とも克服したことがポイントです。

――耐熱・不燃Mg合金のテストカットをご覧になった感想は。

 切削加工の観点で取り組むのは今回が初めてです。Mgは切削性がいいと言われていましたが確かに削りやすそうでした。ドライカットでバリバリ削る様子は、展示会場でご覧になった人にも驚いてもらえると思います。
 しかし、これまでは切りくず処理の問題で、メーカーが切削を依頼しても断られるケースが多かったと聞いています。

――耐熱・不燃Mg合金でも、切りくずになると燃えやすいのですか。

 不燃Mg合金は切りくずになっても燃えることはありません。耐熱Mg合金は、燃えにくくはなっていますが、火がつくこともあります。ただし、切削加工をした際の事故に対する安全性は従来に比べて高まっています。

――今回、MECT2015で実演加工をしますが、どのようなことを期待しますか。

 Mgの応用研究をするうえで、過去の失敗による悪いイメージや固定概念を覆すことが一番大変でした。切削加工をする人たちにも同じことが言えると思います。まずは「Mg=危険」のイメージを覆す必要があります。そのためには、実際に見て安全性を実感してもらうしかないでしょう。
 今回、会場でのデモンストレーションで、Mg合金の加工は危険ではないことをアピールしたい。切削加工のハードルを下げられれば、それだけで成功だと思っています。自分の作った材料を実際に使ってもらうことが夢でした。加工を見て、挑戦してみようとする企業が増えることを期待しています。

(聞き手・月刊生産財マーケティング編集長 八角 秀/写真・渡部隆寛)

2.同時開催学生に魅力を紹介

 大学院や大学、高専の学生が、工作機械や自動車メーカーの技術者と触れ合う機会は少ない。日本工作機械工業会はMECT会期中の10月24日、そして会期後の翌25日に、学生とメーカーをつなぐ企画を予定する。
 「工作機械トップセミナー2015」と題する学生限定セミナーは、次代を担う学生に工作機械の魅力を紹介する。MECTや日本国際工作機械見本市(JIMTOF)に合わせて毎年開催される。
 名古屋での開催は11年展からで、前回展が台風の接近で中止になったため、今回で2度目。24日にはMECT会場を視察。その後、学生と技術者との懇親パーティーが開かれる。そして25日には名古屋市千種区の名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)で、工作機械の重要性やさまざまな先端技術をセミナー形式で紹介する。
 シギヤ精機製作所の鴫谷憲和社長やトヨタ自動車の前田千芳利生技開発部主査、東北大学大学院工学研究科の吉田和哉教授による講演や、若手技術者によるパネルディスカッションなど、さまざまな話を聞くことができる。

3.交通来場には公共交通機関を

毎回MECTには、多くの人が車で来場する。しかし、今回展が前回と大きく違うところがある。それは、ポートメッセなごやの平面駐車場が使えなくなることだ。
 MECTを開催する名古屋市港区の金城ふ頭では、遊園地を核とする商業施設の開発が進められている。それに合わせポートメッセなごやの平面駐車場は昨年12月末に閉鎖された。
 駐車スペースを補うため、名古屋市は金城ふ頭駅前に駐車場を新設したほか、会場から車で15分ほどの所に臨時で空見駐車場を新たに設置した。空見駐車場から、無料のシャトルバスを運行する。
 会期中の駐車場、周辺道路の渋滞が予想されるため、MECT事務局では来場者に公共交通機関の利用を呼び掛けている。

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