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加工の幅広がる、拡大するAM市場

3Dプリンターの知名度が高まり、付加製造(アディティブマニュファクチャリング、AM)技術に注目が集まる。試作品や金型の製造、航空機産業など幅広く使われ、AM技術の国内市場は拡大傾向にある。多くの工作機械メーカーでは、切削とAMを組み合わせた複合加工機の開発し、加工のさらなる可能性を提案する。今年のメカトロテックジャパン(MECT)2017で、AM技術はトレンドの1つになりそうだ。

20年までプラス成長

■国内AM市場推移

国内AM市場の推移を示すグラフ
※2015年までは実績値、16年以降は予測値
出所:IDC Japan

IT専門調査会社IDC Japan(東京都千代田区、竹内正人社長)の調査によると、2015年のAM市場の総売上金額は、前年比4.4%増の344億8600万円。そのまま成長を続け20年には702億300万円に倍増すると見る。

販売価格50万円以上の機械は14年に広く普及したこともあり、出荷台数1600台(前年比23.5%減)、売上金額131億8600億円(同31.8%減)と減少した。しかし、製造業を中心に浸透しつつあることや、インプラントや人工骨の製造で医療分野へさらに普及する可能性を考え、IDCでは20年の出荷台数を2400台、売上金額を193億9000万円とプラスの成長とした。

AMは3次元モデルやデータから素材を重ねながら成形する製造方法で、素材に樹脂が使われる「樹脂積層造形機」と金属が使われる「金属積層造形機」に分けられる。個人向けの安価な物から、企業向けの高価な物まで幅広くあり、産業用の金属積層造形機では1億円を超えるものもある。よく耳にする「3Dプリンター」とは、安価な個人向けの樹脂用機械を指す言葉だったが、最近では積層造形機全般を示す言葉として定着した。

金属積層には金属粉末を敷き詰めたパウダーベッドにレーザーを照射して積層する「SLMタイプ」と金属粉末とレーザーを同時に照射し任意の部分を溶融させて積層する「LMDタイプ」がある。SLMタイプは一体構造の製品や部品の造形に、LMDは既存製品の補修、小物製品の造形で使用される。

AM技術で作られた様々な部品AM技術で作られたサンプルワーク

AMのメリットは、形状や内部構造の複雑な物を作れたり、切削などの除去加工と違い切りくずが出ないことがある。そうした利点から、航空宇宙や医療産業などで活躍しており、中空構造や冷却水間を配置した金型への利用が期待される。

また国家プロジェクトとしても取り組まれており、14年に経済産業省が旗振り役となって29社・団体からなる技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)を設立。金属積層造形機の研究開発が進められる。

切削とAMの複合の流れ

LMDタイプの切削加工機
切削加工機にAM技術を搭載した機種が増えている
(写真はLMDタイプ)

切削加工では難しかった形状の造形や欠けた部分の補修ができるAMだが、造形後に切削加工で仕上げることを前提とすることが多い。そのため、工作機械メーカーでは切削とAMを組み合わせた複合加工機を開発する傾向がある。

SLMタイプの場合、AMと仕上げ加工を繰り返すことで切削加工と同じ寸法精度や面粗度を実現する。またLMDタイプでは、切削後に部分的にパーツを付け加えたり、加工面の表面処理をすることができる。

昨年開催された第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)でも多くの企業が出展。5軸マシニングセンタや複合加工機にAM機能を搭載した機種があったり、機械だけでなく造形した金型を使った射出成形システムとまとめて紹介するなど、加工できる幅が広がった。

JIMTOF後にも、工作機械メーカーのAM参入や新製品発表があった。金属積層と切削が融合した各社の複合加工機は、今年のMECT会場を沸かせそうだ。

(月刊生産財マーケティング編集部)

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