公式メディア連載企画

MECT2021の公式メディア「月刊生産財マーケティング」「SEISANZAI Japan」「robot digest」のコラボ企画です。
月刊生産財マーケティングで毎月掲載する進捗状況や出展者情報、主催者企画の詳細などMECTの応援記事を転載します。

2021.10.8
日本工作機械販売協会 依田智樹会長インタビュー「コロナ前」思い出す4日間に
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前回展会場の様子

工作機械や工作機器、工具などの流通を担う商社が集まった日本工作機械販売協会の依田智樹会長(三菱商事テクノス社長)はMECT2021の開催に期待を寄せる。今回のコロナ禍で急きょ強いられたデジタルツールを介した営業の利点も認めつつ、対面営業やリアル展示会の大切さに改めて気付かされた。「制約の多い開催と思うが、MECT2021の4日間だけでも『コロナ前』を思い出す機会になれば」との思いを描く。

デジタルの明暗が浮き彫りに

コロナ禍で人と人の接触が制限されました。その結果、半ば強制的な形ですが、会員各社は営業活動にウェブ会議システムやタブレット端末などのデジタルツールを取り入れてきました。その活動にも慣れ、利点と限界が明確になったコロナ禍の1年半でした。もし、感染症の終息で対面活動が再開されても、デジタルツールを使う流れも止めてはならない。デジタルの利点も取り入れられれば、コロナ禍前よりも効率的で効果的な活動ができるでしょう。

利点ですが、ウェブ会議システムを使った商談や打ち合わせは、基本的な事柄の確認や連絡には非常に向くと思います。移動時間を省けて、会話の内容も必要分のみ。打ち合わせ時間の延長もなく、効率は向上しました。

一方、交渉や相手の真意を探る会話には向きません。特に機械工具商社の営業では、価格の交渉や仕様のすり合わせが必要です。時には顧客の顔色をうかがい、会話を進めることも。むしろ、商社の営業社員の一番の醍醐味(だいごみ)かもしれません。それが、ウェブ会議システム経由では、あまり上手にはできない。どうしても事務的な会話に終始してしまいます。具体的な形では目に見えませんが、一堂に会して共有する「空気感」の大切さを、改めて認識させられました。

オンラインでは初見の相手とは雑談が全くできません。相手の人となりを知らないまま交渉するのは、当然困難です。それでも、企業内の異動や転勤はコロナ前と同様の頻度で実施されるので、引き継ぎのあいさつもなし。企業同士は強いつながりなのに、知らぬ間に担当者が変わって窓口同士は互いに初見、なんて出来事もありました。

コロナ禍でいくつものウェブ展示会が開かれました。情報が集約されていて、製品の特徴や仕様を一挙に確認するには有用だと思います。一方、リアル展の良さが思い出される場面も少なくありません。特に工作機械では、機械の臨場感や迫力、加工の様子を目の前で見て、言葉や画像、動画以上の情報を得ていたと実感させられます。

MECTを内需の起爆剤に

足元の景況感は、「まだら模様」との印象です。外需は全地域で全業種にわたって好調ですが、それに比べると内需は力強さに欠けています。内需は半導体関連や、次世代自動車関連で自動車業界の設備投資が活発な一方、自動車の内燃機関や航空機産業は元気がなく、産業別に明暗が分かれています。また、地域別では西日本や中部地方は勢いが付いてきて、関東や東日本はこれからとの印象です。

そのような状況下で開かれるMECT2021に非常に期待しています。国内では2年ぶりの工作機械見本市で「ああリアル展ってこんなによかったんだ」と再び実感できる機会にしてほしい。4日間でいいから、コロナ前の感覚を思い出せる場になってほしいと思います。

また、MECTは例年、作業着姿の来場者も多いとの印象です。出展者には経営者層だけでなく、現場の声を聞ける貴重な機会になります。久々のリアル展や対面営業の機会が、今まさに内需を押し上げなければならないタイミングです。われわれ商社もメーカーと一緒に盛り上げられれば幸いです。

見どころは自動化、環境、IoT

見どころは「自動化」「環境対応」「モノのインターネット(IoT)」と予想します。まず自動化では、コロナ禍で生じたニーズへの提案に期待します。現在は現場で作業者が密接しない環境づくりを求められます。人の単純作業の代替にはロボットが有効です。従来からの人手不足や作業内容の均一化に加えて、密接回避のニーズが工作機械ユーザーに生まれました。その要望に応えるようなメーカーの提案を具体的な形で見られると、楽しみにしています。

この1、2年ほどで最も意識が高まったのが、「環境対策」ではないでしょうか。政府が昨年、2050年までの二酸化炭素の排出削減の目標を立て、「カーボンニュートラル(CN、炭素中立)」に取り組む企業が一気に増えました。今回展では最新機種の消費電力の削減量を示したり、新たな需要を見込む次世代エネルギー関連の加工用途への訴求も増えそうです。

顧客支援への協業が進む

IoTでは、従来よりも広い範囲を対象にして、データを活用するニーズが生じていると実感します。従来は機械や設備の生産性向上を目的に、稼働状況の把握や異常の予知保全を用途にした導入例が大半でした。このコロナ禍で、そのシステムをサプライチェーンまで広げようとの動きがあります。さらに設備の生産性だけでなく、環境対策で消費エネルギーを可視化できないかとの問い合わせも増えています。

IoTや自動化は、展示会などでメーカーが提案するような概要を見てもらい、興味のある顧客に商社から最適で具体的な形を提示してまとめるのが、最も効果的でしょう。われわれの会員企業もメーカーやロボットシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、システムベンダーとの協業を進めて、顧客支援の体制づくりを急いでいます。

MECT2021は、新しい製品や技術を豊富に見られるでしょう。しかし、そもそも2年ぶりのリアル展です。会場各所で再会を喜ぶ声が聞こえ、4日間だけでもコロナ前に戻った感覚を得られればと、非常に期待しています。もちろん、全て十分な感染予防対策を主催者にはお願いした上での話です。

<プロフィール>
よだ・ともき
1981年東京大学経済学部卒、同年三菱商事入社。2014年理事、機械グループCEOオフィス室長。18年三菱商事テクノス社長。19年6月から日本工作機械販売協会会長。北海道生まれの62歳。
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