公式メディア連載企画

MECT2021の公式メディア「月刊生産財マーケティング」「SEISANZAI Japan」「robot digest」のコラボ企画です。
月刊生産財マーケティングで毎月掲載する進捗状況や出展者情報、主催者企画の詳細などMECTの応援記事を転載します。

2021.10.18
ジェイテクト 佐藤和弘社長インタビュー 良品廉価で市場広げる
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ヤマザキマザック 山崎高嗣社長

新型コロナウイルス禍の厳しい事業環境下にあった昨年6月に、ジェイテクトの社長に就任した佐藤和弘氏。「年輪経営」を目指してビジネスモデルの転換を急ぎ、競争力の強化に努める。工作機械・システム事業本部では良品廉価を追求し、自動車以外の分野にもターゲット市場を広げる考えだ。MECTの展示機のカラーやロゴも変更し、方針転換の姿勢を対外的にPRする。

――昨年6月に社長に就任しました。

2021年3月期第1四半期の最終損益は251億円の赤字で、厳しい事業環境の中で経営のかじ取りを担うことになりました。先行きが全く見えませんでしたが、正直ワクワクもしました。後は上がるしかないですから。全社一丸となって努力し、21年3月期は最終的に8億円の黒字転換を達成できました。

――ジェイテクトをどんな会社にしたいですか。

従業員が10年後、20年後も安心して働ける会社を目指します。樹木が年輪を重ねるように、少しずつでも確実に成長する「年輪経営」を実現したいと考えています。そこで、なぜ赤字になったかを分析しました。一言で言えば甘かった。過去の延長線上で仕事をしており先を見通す力が弱く、競争力が相対的に失われつつありました。競争力を抜本的に強化するため、ビジネスモデルを転換するのが当面の課題です。同時に、従業員のマインドも長い年月をかけて変える必要があります。

――マインドを変えるのは決して簡単ではありません。

従業員には自社の甘い部分を数字で具体的に示し、現実を直視させました。251億円の赤字を出したのが何よりの薬で、危機感を共有できました。最終的には全員が地球のため、世の中のため、顧客のために何をするべきかを本気で考え、常に改善し続ける会社にしたいです。そうすれば、何が起こっても負けない会社になるはずですし、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラル(炭素中立)も達成できます。今は甘い部分が多いですが、裏を返せば、手を打った分だけ効果が出るのでやりがいがあります。

――改善の余地が大きい。

わが社はグループ会社まで含めると事業のすそ野が非常に広く、数多くの要素技術を保有しているのが特徴です。実は工作機械の分野では、特許件数が業界ナンバーワンなんです。ただ、他の分野も含め、多くの製品や技術を保有していながらも、今まではベクトルがばらばらでした。これらを一つの方向に合わせるだけでも、大きな強みになると確信しています。

――相乗効果が期待できます。

従来は事業本部ごとの縦割りでしたが、今は役員を中心に相互のコミュニケーションを強化し、シナジーの創出を進めています。例えば、これまで高価な輸入機に頼っていたベアリングの生産設備を内製にしたところ、導入コストを大幅に削減できたのに加え、工程集約も実現できました。このような事例が今後増えるでしょう。

――工作機械・システム事業本部の戦略を教えてください。

研削盤では、世界ナンバーワンになるのが長期的な目標です。得意領域の自動車以外の分野にも通用するメーカーになるため、良品廉価をこれまで以上に追求したいと考えています。また、13年に世界で初めて製品化した「ギヤスカイビングセンタ」では、オンリーワンの技術を磨いて差別化を図ります。電気自動車(EV)へのシフトが進んでも歯車の需要は残りますから、オンリーワンの歯車加工技術があれば多くの顧客に必要とされるはずです。

――良品廉価とは?

良品とは「良い性能、良い品質」で、廉価とは「お手頃な価格」ですが、それらの基準は自社ではなく、顧客が決めるものです。価格はあくまで市場が決めるものですから、お手頃な価格で利益を出すには、原価を下げるしかありません。従来は自動車業界の大口顧客を中心に、特別仕様の高価な工作機械を提供すれば良かった。しかし、今後はコスト競争力の高いベースマシンを開発し、顧客ニーズに応じてオプションを組み込んで提供する方向にシフトします。これにより、自動車以外の分野にもターゲット市場を広げます。

――思い切った方針転換です。

EVシフトが進めばエンジンは減少し、その部品を加工する円筒研削盤の需要も縮小します。このことは以前から分かっていたにもかかわらず、既存のビジネスモデルを維持していました。そこで、巻き返しを図るための第一歩として、顧客や代理店を招いてわが社の工作機械の改善点を議論する場も設けました。顧客の声を素直に聞き、それに応える努力をすれば、さまざまな市場に受け入れられるでしょう。大口顧客がいただけに「殿様商売」になりがちでしたが、商売の基本に立ち返ります。

――MECTには何を出展しますか。

EV用の小型部品の加工に最適な小型工作機械を2台展示します。モーターシャフトの量産加工に力を発揮するCNC円筒研削盤「e300GPi-HYPER(ハイパー)」と、モーターケースなどを高効率で加工する5軸立形マシニングセンタ「FV7000Z」です。方針転換の姿勢を明確に示すため、機械のカラーやロゴも変えて展示します。ロゴは「TOYODA」ではなく、社名の「JTEKT」を使います。

――御社は工作機械ユーザーでもあります。来場者目線でMECTに期待することは?

部品を作るには工作機械が欠かせず、工作機械は一国の産業の競争力を支えています。多くの工作機械メーカーが最先端の技術を今回のMECTで披露することで、日本の底力をアピールする良い機会になればと思います。

<プロフィール>
さとう・かずひろ
1979年3月同志社大学工学部卒業、4月トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。2005年1月品質保証部長、14年4月常務役員、17年4月専務役員、19年1月執行役員。20年1月ジェイテクト顧問。同年6月から現職。愛知県出身。1956年4月生まれの65歳。
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