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MECT2019の公式メディア「月刊生産財マーケティング」「SEISANZAI Japan」「robot digest」のコラボ企画です。
月刊生産財マーケティングで毎月掲載する進捗状況や出展者情報、主催者企画の詳細などMECTの応援記事を転載します。

[インタビュー]日本工作機械工業会 飯村幸生 会長  「量から質」へと転換する初の展示会

今年の工作機械の月別受注額を見ると、前年同期比を平均で約30%下回っており、力強さに欠ける。こうした市況の下で開催されるMECT。特に内需の「起爆剤」として、FA業界から大きな期待がかかる。日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長もその一人。「中部地方という世界でも特異な製造業の集積地での開催」「展示内容の比重が量から質へと転換する世界で初の工作機械見本市になる」と期待を込める。(聞き手・八角 秀)

飯村幸生 会長
飯村幸生 会長

いいむら・ゆきお

1980年同志社大学工学部機械工学科卒業、東芝機械入社。2000年射出成形機技術部長、04年微細転写事業部長、06年取締役、09年社長を経て、17年4月から会長。同年5月から現職。
静岡県出身。1956年生まれの63歳。

世界でも特異な製造業の集積地で

――工作機械の市況はいかがですか。

外交問題を中心に重いふたがある状況です。米中の貿易摩擦だけではなく、欧州では英国の欧州連合(EU)離脱問題(ブレグジット)やイタリアの財政不安があり、ドイツ経済も停滞している。中東にも紛争の火種があります。東アジアでは日本と韓国の関係が悪化しました。また香港のデモ鎮圧に中国政府が介入しており、この対処次第では、中国が国際社会から孤立してしまう。米中の貿易摩擦を筆頭に、経済が外交の武器になっているため、明るい見通しを立てにくいです。

――今が受注額の底と考えていいのですか。

ここ数カ月は月間受注額が1000億円近辺で推移しており、これが底と考えています。全体に様子見感はありますが、大口の受注も取れている。世界が混乱する中で、ある程度の調和は取れているとの印象です。ただこの状況が、例えば18カ月続けば、会員企業の経営はきついでしょう。好不況の周期はおよそ3年で波を描きます。年初の予測では、年内で底打ちをして2020年の年初には反転する、とみる業界関係者も多かったですが、その通りには進んでいないのが現状です。

――内需はいかがでしょうか。

ここ数カ月の内需受注額は約400億円で推移しましたが、もしかすると実態よりも良い数字かもしれません。今年10月の消費税増税前の駆け込み需要や、今年8月以降は政府による補助金の影響がありましたので、本当の実力はもう少し低い可能性もあります。いずれにせよ、われわれは日本市場に注力しなければなりません。受注額のうち6割程度を外需が占める時代になりましたが、一国で見ると日本が4割を占めており、最大の市場です。会員各社は、内需の起爆剤としてMECTに期待しているでしょう。

――MECTの特徴は。

来場者は9万人超で、中部地方の人が多い。日本国際工作機械見本市(JIMTOF)と比べると、作業現場の機械オペレーターも多く、来場者との距離感が近い展示会と感じています。この景況で迎えることもあり、各社はMECTでどうアピールするか策を練っているはずです。

――中部地方の製造業の印象はいかがですか。

中部地方は世界で見ても、特異な製造業の集積地です。例えば、米国では航空機産業はシアトルを中心とした西海岸に集中し、自動車産業はデトロイトなど別の地域に集まっています。ドイツや欧州各国を見ても、地域ごとに得意な産業が異なります。ところが、中部地方は自動車から航空機、一般産業など幅広い。工作機械のサイズで言うと、小型製品から超大型製品まで納入されます。このような土地は世界でも、中部地方だけでしょう。

――今回展の注目ポイントはありますか。

世界的なトレンドとして、今後の製造業は「量より質」を重視するようになります。「生産能力の向上」ではなく「生産効率の向上」を志向した設備投資が増えるでしょう。そして工作機械関連では、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、付加製造(AM)、産業用ロボット、5軸マシニングセンタ(MC)や複合加工機などが、生産効率の向上を訴求するポイントになるでしょう。

――今年9月にはドイツで工作機械見本市EMOハノーバーがありました。

EMOハノーバーでも、設備同士や人間が高次元で連携した先進的な工場を指すスマートファクトリーが大きなトピックになりました。例えば、ドイツの工作機械工業会が主導して開発を進めるIoT基盤「umati(ウマティ)」で、使えるアプリケーションが増え、具現化してきています。ただ、日本と欧州の工作機械には違いがあると見ています。欧州メーカーの機械は、ある特定の仕事が得意な専用機に近いものが多い。対して日本の工作機械は、汎用的なものが多い印象です。

――なるほど。

大量消費した時代からの変化で、今後の生産設備には、異種変量生産が求められるでしょう。フレキシブルに生産効率を上げるとなると、汎用的なものが多い日本の工作機械の方が得意かもしれません。そして、日本メーカーが多数出展するMECTは「量から質」への転換を具現化する世界で最初の展示会になると見込んでいます。そう考えると、MECT2019のキャッチコピー「ミライ、ゾクゾク。」は良いですね。

――MECTに時期を合わせて学生向けの「工作機械トップセミナー2019」を開催されます。

はい。日工会ではJIMTOFとMECTに合わせて開催しており、通算14回目、MECTでは今回で5回目を迎えます。これまで学生を中心に合計5500人以上が参加しました。今回は、北海道から九州まで全国から学生の応募があると聞いています。「継続は力なり」で、継続すればするほど実になっていく実感があります。

――トップセミナー開催の目的は。

一番は人材の確保です。工作機械業界に、いかに良い人材を引き付けるか。市場ニーズの変化に応じて工作機械は進化してきました。それに伴い、業界内の人材に求められる専門分野も広がりました。今後はデータサイエンティストやソフトウエアに強い人材が要るでしょう。トップセミナーはセミナーやラウンドテーブルを通じて、各メーカーの経営陣の、ものづくりへの情熱を学生に直接伝える良い機会と捉えています。どの分野のエンジニアでも、熱いパッションがないと良いものは作れないと信じています。

(月刊生産財マーケティング編集部)

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