• 連載「見どころ紹介」

連載「見どころ紹介」

2023年9月11日

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ファインセラミックスを平らに

精密部品の研削加工を実演

精密部品の研削加工を実演しているイメージ

メカトロテックジャパン(MECT)2023の主催者企画展示(コンセプトゾーン、CZ)では、3社が中心となり、加工技術を披露する。フルカワセラミックス(新潟県阿賀野市、古川幸作社長)は加工が難しいファインセラミックス製の部品を、高い精度で供給できるのが強み。半導体製造装置用の大型ワークを岡本工作機械製作所の研削盤で加工し、精密な技術で表面を平らにする。「驚きのスゴ技」が並ぶCZで、巧みにワークを削る同社の実演に注目したい。

均一に、平らに

MECT2023のCZでは、ファインセラミックスの研削加工を直接目にできる。
 加工するのは半導体製造装置用の円形部品をイメージしたワークで、直径800mm、厚さ35mm、質量70kg。研削盤で大型ワークの表面を、均一に平らに削る。

ファインセラミックスは加工が非常に難しく、高精度な製品を作れる企業は国内でも限られる。
 今回CZに登場する1社が、2011年に創業したフルカワセラミックスだ。
 立ち上げから10年ほどで急速に成長を遂げている企業で、5軸マシニングセンタ(MC)や研削盤など約90台の工作機械を保有する。角物や丸物など形状を問わず、中型から大型ワークの加工を得意とする。

会場では岡本工作機械製作所のロータリー平面研削盤「PRG8-iQ」を使い、その技術力を披露する。ファインセラミックスは素材の脆(ぜい)性から加工時に割れが発生しやすいが、PRG8-iQであれば安定して平面出しをできる。

古川社長は「通常は表面を均一に削るだけでも難しく、セラミックスの加工を前提にした研削盤でないと加工できない。しかし、どんなに高性能な機械も使いこなせなければ意味がない。高精度に加工できる機械と、それを扱える技術力の両方があって初めて精密な製品を供給できる」と説明する。

研削で注意すべきは

古川幸作社長

「高度な機械と技術力の両方で、高精度な加工を実現する」と話す古川幸作社長

ファインセラミックスは非金属材料で、高い強度や耐熱性、絶縁性などの特徴を持つ。高度に精製した原料粉末を基に作られ、成形や焼結など複雑な工程を経て製品になる。

金属よりも硬度が高いため、加工する際はダイヤモンド砥石(といし)を使う。原料の種類や調合方法などを変えることで、用途に合った特性を与えられる。
 そのためさまざまな分野で活用が進んでおり、とりわけ半導体とその製造装置関連の市場の成長とともに、ファインセラミックスの注目度も高まっている。

材料により特徴が異なるなか、アルミナは汎用性が高い。他の材料と比べて加工しやすく、最も広く使われている。
 CZで加工するワークの素材もアルミナで、金属加工と同様に切削や研磨をして部品を作るが、その際粉じんが発生するのに注意しなければならない。
 古川社長は「微小な粉が機械に付着し、かみ込みやさびの原因になる。機械のこまめなメンテナンスや研削液のろ過などを徹底し、故障を防いでいる」と説明する。

徹底した品質検査

ロータリー平面研削盤「PRG8-iQ」

CZで使う岡本工作機械製作所のロータリー平面研削盤「PRG8-iQ」(岡本工作機械製作所提供)

フルカワセラミックスが加工するワークの主な材料は、アルミナや炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウムなど。受注のうち9割以上が半導体製造装置関連で、半導体の基板のウエハーを搬送するロボットのハンド部品なども生産する。

生産量をさらに高めるべく、設備投資をして毎年10台ほど機械を増やしている。製品の要求精度が高く、1つ1つの加工に長い時間がかかるため設備の増強は必須という。
 古川社長は「素材調達も含めると試作に半年以上かかるケースもあり、そこから顧客の品質検査を受ける。一定の品質を保ちながら量産できるように、データに基づいて作業者と設備を管理している」と話す。

また同社は加工機だけでなく、測定機も数多くそろえる。「3次元測定機は合計7台で、表面粗さ計や画像測定機もある。顧客の要求精度に応えるために、厳しい検査体制を構築している」(古川社長)。

創業当初は新潟市内の倉庫の一角を借り、機械を3台置いて部品を加工していた。初めはなかなか受注に結び付かず苦労したが、3年目に県内の企業から部品加工の依頼を受けた。
 古川社長は「時間をかけ必死に加工した。納入した部品の量産が決まり、売り上げが4倍になった」と振り返る。それをきっかけに受注が増えて業績も安定し、現在は60社ほどと取引している。創業時3人だった従業員数は、関連企業4社を含めて約100人になった。

半導体の微細化に向けて

演算速度の高速化や省電力化などのために、半導体の構造はより微細化している。国内でも次世代半導体の製造に向け、新技術の開発に注力する企業は多い。

古川社長は「部品の要求精度がますます上がっており、微細加工に適した機械が必要になる。機械の特性などへの理解を深め、加工技術を追求していきたい」と語る。
 それに加え、品質保証の重要性も増すという。同社は受注から納品までの各工程で、どのようにして不具合や品質不良が発生するかを分析した。「加工技術を高めることはもちろん、それと同じくらい生産体制の整備に取り組んでいる。問題発生時にすぐ対応できる仕組みを整え、精度の高い部品を安定して供給したい」と意気込む。

今後さらなる高精度部品が要求される半導体業界。優れた技術がなければ精度を出せないファインセラミックスを、CZの会場でどのように加工するのか期待が高まる。

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