主催者企画展示(コンセプトゾーン、CZ)に出展するアルファーテクノロジー(大阪府東大阪市、中嶋直文社長)は、5軸マシニングセンタ(MC)を活用することで加工時間の短縮と加工精度の高さを両立する。これらを実現するためには機械だけでなく工具も重要な役割を担う。加工回数をできる限り減らし、コストも抑えられる最適な工具を見極める。CZでは、5軸加工ならではのオリジナルワークを出展する他、5軸MCと特殊専用工具を使った実加工も披露し、強みをPRする。
特殊工具を駆使して時短加工
アルファーテクノロジーは、安田工業(岡山県里庄町、安田拓人社長)やオーエスジーと協力し、これまでに培った5軸加工の技術を披露する。
会場には高さ250mmほどの円筒形のMECTオリジナルワークを展示。オリジナルワークはらせん状で、5軸MCでしか加工できないほど複雑な形状だ。
安田工業の5軸MC「YBM Vi40」を設置し、オーエスジーの特殊専用工具との組み合わせで、従来よりも時間を短縮できる加工技術を実演する。
他にも、5軸MCに最適な機内計測や粗加工の時間を短縮する新たな工法も紹介する。
精度の高さと加工時間の短縮を両立するため、5軸MCだけでなく、工具の使い方も工夫する。
高い精度を出したい時には、一般的にボールエンドミルなどワークと点で接する工具が使われる。
これらの工具は高い精度が出せる反面、加工に時間がかかってしまう。加工時間の短縮と高い精度を両立させるため、フラットエンドミルのような加工時にワークに面で接する工具を使う。
「ワークに面で接する工具は切削面積が広い反面、高い精度を出せないというのが定説だった。しかし、今は工具の性能も上がっており、十分な加工精度が出せるようになった」と中嶋社長は話す。
生産システムを売る
「かんばん方式の浸透で、納期にシビアな顧客が増えたように感じる」と語る中嶋直文社長
アルファーテクノロジーは、前身企業の5軸加工部門が独立し2016年に設立。それ以来5軸加工を専門としている。
5軸加工はワンチャッキングでワークを加工できるため、3軸加工よりも加工時間を短縮できるのが大きな特徴。3軸加工でもできるワークをあえて5軸加工で引き受け、加工精度の高さや加工時間の短縮などのメリットを際立たせる。
中嶋社長は「わが社としては、ただ加工したワークを売るのではなく、高精度と時間短縮の技術を確立させた生産システムを売っているイメージ。5軸加工に魅力を感じ、リピート注文する顧客は多い」と語る。
加工時間を短縮する他、ワークの脱着が原因の加工不良の発生を抑えられるのも5軸加工のメリットだ。人の介在をできる限り減らすことで加工精度が安定し、機械が出せる精度をそのままワークに転写できる。
中嶋社長は「高精度を売りにするため、現状で最高の精度が出せる5軸MCを導入するようにしている」と話す。それとは別に、必要最低限の精度を保証する5軸MCも導入しており、顧客が求める精度に合わせて機械を使い分ける。
5軸加工は加工経路が複雑になってしまうため、加工プログラムを組む時間が他の加工よりも長くかかってしまうのがデメリットとして挙げられる。
しかし、中嶋社長は「加工は機械のボタンを押すだけで完了する。加工後の手離れが良いことに加え、ワークの脱着が原因の加工不良を起こしにくい」と強調する。
あえて一番高い工具を
加工にかかる時間を短縮するため、5軸MCを使うだけでなく、工具の選定にもこだわる。引き合いを初めて受ける時には、加工に適した工具の中でも一番価格と性能が高い工具をまず使う。
「最初は価格帯の安い工具から使いがちだが、それで図面通りの加工ができなかったら他の工具を用意しないといけない」と中嶋社長。「安物買いの銭失いはしたくない。一番高い工具を使い、それでもうまくいかなければ気持ちも割り切れる」と話す。
図面通りの加工に成功したら、求める精度が出せる工具の中で、一番安価な製品に変えていき、コストダウンを図る。「同じ加工性能を出せるのならば、わざわざ高い方を買う必要はないという大阪人的な発想」と中嶋社長は笑う。
アルファーテクノロジーの前身企業が5軸加工を始めたのはおよそ20年前と、5軸加工そのものの黎明(れいめい)期だった。
5軸MCの導入当初は市販品のジグを使っていたが、導入費用がかさんでしまうため、内製にかじを切った。
「より良いジグを作るにはどうしたらいいか試行錯誤した。インターネットで調べたり、動画サイトにアップされている加工動画を参考にした。技術の確立に10年ほどかかった」と振り返る。
今後の展望として、中嶋社長は事業の拡大ではなくM&A(企業の買収・合併)による事業承継を挙げる。その道筋を作るため、19年にタイの機械メーカーMRPエンジニアリンググループに加入した。「今いる社員と設備で、企業の価値をできる限り上げていきたい」と力を込める。
コンセプトゾーンの紹介はこちらから
連載「見どころ紹介」
MECT2023の公式メディア「月刊生産財マーケティング」「SEISANZAI Japan」「robot digest」のコラボ企画です。
月刊生産財マーケティングで毎月掲載する進捗状況や出展者情報、主催者企画の詳細などMECTの見どころを掲載した記事を転載します。
MECT2023の公式メディア
ニュースダイジェスト社が発行する工作機械を中心にした設備財関連の専門誌。2023年で創刊報や国内外の工作機械展レポート、最新の工業統計などを掲載する。資料価値も高く、業界から高い評価を得ており、20年からは電子版の発刊も始めた。
「月刊生産財マーケティング」について、詳しくはこちらから
2018年4月にオープンしたFA業界の最新ニュースを海外に向けて発信する英文サイトで、日本企業の新製品の情報やニュース、展示会リポートなどを紹介している。
「SEISANZAI Japan」はこちらから
生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン。産業用ロボットや自動化機器に特化した記事を掲載する。産業用ロボット関連の新製品や新サービス、導入事例、先進企業の取り組み、統計データ、助成制度など、あらゆる情報を発信する。
「robot digest」はこちらから