-見どころ紹介-

MECTのここが激アツ!!!!

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Vol.4

医療が求む日本の加工術

医療分野の
激アツ!!!!
を発見

MECT2023コンセプトゾーンのイメージ

医療機器産業は他の産業と比較して今後の世界市場での成長率が高く、今後も有望な分野だろう。ただ、求められる加工技術の水準が高い。機器には難削材が使われることもある。複雑形状や小型化の傾向もあり、精密な加工も必要だ。品質保証や開発力も求められる。それらは他の産業向けの加工でも重要性が増す要素だ。そこで「メカトロテックジャパン2025(MECT2025)」の主催者企画展示(コンセプトゾーン、CZ)のテーマに「医療」を据えた。それに合わせて、本特集でも医療に焦点を当てる。

27年には世界で100兆円近くに

医療機器産業成長率のグラフ

医療機器産業は、世界的に高い成長率が見込まれる分野である。英国の調査会社、フィッチ・ソリューションズの最新の発表によると、2023年の世界の市場規模は約5176億ドル(約76兆900億円、1ドル=147円で換算)となった。

今後も世界の人口増加や先進国の高齢化、技術革新などで、27年には約6543億ドル(96兆1800億円)に成長すると予測されている。この予測を基にすれば、18年から27年の年平均成長率(CAGR)は5.9%に達する。これは、世界の主要産業の中でも高い成長率を誇る。

国内に限っても、23年の約256億ドル(3兆7700億円)から27年は約380億ドル(5兆6000億円)に達する予測だ。18年から27年のCAGR は3.7%とされている。世界の数値よりは下回るものの、堅実な成長が見込まれる。

そして何よりも、景況の波が少ないのが、魅力的な産業だ。

そんな状況もあり、経済産業省は今年6月に医療機器産業の成長に向けた戦略「医療機器産業ビジョン2024イノベーション創出及び事業化支援戦略」を発表した。有望な開発品を持つベンチャー企業から、オリンパスやテルモといった大手まで支援する。技術やアイデアを持つ新興企業と大手の医療機器メーカーをつなぎ、革新的な製品の開発を後押しする。

医療機器は幅広い

ただ、医療機器といっても漠然としたイメージを持つ人は少なくない。簡単にまとめると、人や動物の診断や治療、予防などに使われる機器全般にあたる。大きなものではCT装置やMRI装置などの検査装置から、手術に使うメスや鉗子(かんし)、身近な物では救急ばんそうこうまで幅広い。これが漠然としたイメージにつながる要因だろう。

その幅広い医療機器の中で、特定分野に絞れば、日本が得意とする加工技術を生かせる部分が多いのも事実だ。

例えば、人体に直接埋め込むボーンスクリューや歯科などのインプラント部品には、耐久性や生体適合性の観点からチタンやステンレスなどの難削材が使われやすい。

また、医療機器の複雑化や精密化の潮流が強まっている。要因の一つは医療業界でも現場の人手不足が進行し、施術や治療期間を短縮するニーズがあり、使いやすさのための工夫を盛り込んだ機器が増えている点。もう一つは手術や検査などでの痛み、発熱、出血などを抑えて患者の負荷を減らす「低侵襲(ていしんしゅう)治療」の発展で、メスを入れる範囲を小さくしたり、人体の内部から施術するケースが増えていることだ。

さらに、医療機器産業に特化した品質マネジメントに関する国際標準化機構(ISO)の規格「ISO13485」に代表されるように、加工精度だけでなくクリーンルームなどを活用した清潔性の担保といった万全の品質保証体制が要る。

その上で、医療業界や医師などと共同開発するケースもあり、高い開発力やそれを具現化する実現力も問われる。

これらの医療機器産業向けの加工の特性は、どの産業向けでも年々重要性を増している加工関連の要素といえる。つまり、医療機器向けの加工術を学ぶことで、参入までは考えなくとも、日々の加工に生かせるヒントはある。

今後に役立つヒントを

10月24日にはCZ内で特別セミナーを実施する(写真は前回展)

10月24日にはCZ内で特別セミナーを実施する(写真は前回展)

本連載では次回から3週にわたってCZの内容を紹介する。MECTでは毎回、CZで世界最先端の技術の実演展示に挑戦している。MECT2025では「医療を支える加工術 ―異業種に学ぶ成功のヒント―」をテーマに、会場のポートメッセなごやの第3展示館で医療機器向けに高度な加工技術を培ってきた3社が得意技を披露する。展示内容を特集の最後にまとめた。

CZでは、会期3日目の10月24日に「広がる医療ビジネスの魅力」と題し、3社の代表者が自社の強みや成功の要因、今後の戦略などを語り合う特別セミナーも実施する。こちらも見逃せない。

機密事項も多く、普段はなかなか公開されることのない医療機器向けの加工を間近で見られ、今後に役立つヒントを発見できる貴重な機会になるだろう。

NEXT

「CZで精緻な
微細加工を発見!」
9月16日(火)公開

次回から3回にわたってCZに出展する企業を紹介する。キャステムは「医療器具のミニチュア再現技術」をテーマにミニチュア鉗子を展示する。鉗子の先端に施された微細な模様は同社の特級技能士による精緻な金型加工のたまものだ。小さなミニチュア鉗子にぎゅっと詰め込まれた“激アツ!!!!”な技術に迫る。

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「MECTのここが激アツ!!!!」とは

本連載はMECT2025公式メディア「月刊生産財マーケティング」とのコラボ企画です。
MECT2025の出展者情報の他、恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)や会期中に開催されるセミナーといった激アツな見どころをお届けします。また本連載は月刊生産財マーケティングにも掲載されます。

生産財マーケティングイメージ
生産財マーケティング

ニュースダイジェスト社が発行する工作機械を中心にした設備材関連の専門誌。世界の業界情報や国内外の工作機械展レポート、最新の工業統計などを掲載する。

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