決して悪くはない

今年の工作機械業界の市況を一言で表すなら、現時点では「数字は悪くないが、やや勢いに欠ける」となるだろうか。日本工作機械工業会(日工会)によると、8月の受注総額の速報値は前年同期比8.1%増の1197億1900万円だった。7月までの推移を見ると、6月以外の全ての月で前年同期比を上回った。一見すると市況は上向いているように思える。
だがこれはあくまで前年同期比、つまり2024年との比較でしかない。年間の受注総額を振り返ると、過去2番目の高水準を記録した22年から23年にかけては約15%下がり、そこから微減となったのが24年の受注総額だ。確かに今年の受注額は今のところ前年から上向いているが、各月の上昇率は3%~11%ほど。これらを踏まえると、冒頭の「やや勢いに欠ける」との表現に納得できるのではないだろうか。
さらに、内需と外需に分けて動向を見ると状況の違いが現れる。内需は単月の受注額が、4月以降の全ての月で前年より下がった。一方、外需は全ての月で前年を超える数値となっており、3月は期末効果も影響して17.9%増加した。単純に市場規模を考えれば外需比率が高くなるのは自然ではあるが、内需が立ち上がってこない点は無視できない。
年後半になると「今年の受注総額はどれくらいに落ち着くか」との話題がよく出るようになる。日工会によると1月~6月の受注総額は、同5.1%増の7775億4000万円。年初の見通しの1兆6000億円に対し、半分にはわずかに届いていない。外需がけん引する中で、国内の設備投資も勢いづけば、この見通しに達する可能性は大いにある。