-見どころ紹介-

MECTのここが激アツ!!!!

  • 見どころ紹介
Vol.7

同一素材から省段取りで
2種類のワークを

医療の未来を創る新工法を発見!

機械のイメージ

自動車、航空・宇宙、医療用ボルトメーカーのメイラ(名古屋市中村区、大橋真社長)と中村留精密工業(石川県白山市、中村匠吾社長)は整形外科用インプラントの加工技術を生かし、オリジナルワークの加工をコンセプトゾーン(CZ)で実演する。ワーク剛性を保つために工程設計を工夫したり、「オービット加工」といった新工法を活用したりと、さまざまな要素を盛り込みながら、1台の複合加工機を駆使して異なる2種類の複雑形状ワークを同一の素材から省段取りで加工する。

オリジナルワークをCZ用に設計

加工実演で使用する中村留精密工業の複合加工機「MX-100」

加工実演で使用する中村留精密工業の複合加工機「MX-100」

メイラがCZで披露するのは、骨折治療に使われる整形外科用インプラントをイメージした2種類のワークの加工実演だ。「さまざまな要素を盛り込んだ2種類のオリジナルワークをCZ用に設計した」とメイラメディカル事業部技術グループの伊藤裕康主任は話す。

会場では中村留精密工業の複合加工機「MX-100」を使い、異なる複雑形状ワークを同一の素材から省段取りで加工する。MX-100は工具主軸と下タレット刃物台を備えた6インチチャックの対向2スピンドル型の複合加工機。1台で多種多様な加工ができるため、複雑形状ワークが多い医療業界向けにも力を発揮する。

メイラが手掛ける整形外科用インプラントのワークにはスクリューやプレートなどがあり、これらは主に骨折した場所を固定するのに使われる。そのため、一般的には生体適合性の高いチタン合金が採用されるが、CZではデモンストレーションのため真鍮(ちゅう)製のオリジナルワークを加工する予定だ。

最初から曲げた状態に

下タレット刃物台に装着したセンターで「プレート」を支持しながら加工するイメージ

下タレット刃物台に装着したセンターで「プレート」を支持しながら加工する様子

CZ用のオリジナルワークの一つが「プレート」で、会場では並列配置した2個のプレートを直径30mmのバー材から削り出す想定で加工実演を披露する。母材とプレートをつなぐゲート部を細くし、プラモデルのように簡単に母材からプレートを切り離せる「タッチゲート方式」を採用したのも特徴だ。

今回は7カ所にゲート部を設けるが、その分ワーク剛性が低下するため、加工工程の順番によっては加工びびりなどの問題が発生するという。中村留精密工業営業技術部加工技術課の五宝純一さんは「ワーク剛性を考慮し、適切な順序とタイミングで各工程の加工を進められるよう意識した」と述べる。

プレートの製造工程は平面加工や穴開け、ボールエンドミルによる曲面の筋彫り加工、面取りなどで構成されており、一般的にはマシニングセンタ(MC)を使うイメージが強いだろう。これに対し、両社はMX-100の下刃物台に心押し用の回転センターを取り付けてワークを支持しながら、MCが得意とするこれらの加工を複合加工機で実施する。これで作業者が介入することなく、ジグレスや段取りレスで完成品まで加工でき、自動化を通じた効率化も図れる。

また、もう1種類のCZ用のオリジナルワークは「ベンドパイプ」だ。伊藤主任は「従来はストレートパイプに外周加工や深穴加工を施した後にテーブルベンダーで曲げていた。一方、最初から曲げた状態のパイプを切削できれば、品質向上や工程集約を実現できる」と語る。

だが、通常の旋削では“最初から曲がった形状”を加工できない。曲がった部分の外周をエンドミルで加工する手もあるが、後工程の研磨を考慮すると切削目(加工後のワークに残る切削痕)は同じ方が望ましい。そこで、今回は内径ボーリングバーを工具主軸に取り付け、刃先の位相を制御しながら工具を回転させ、ワークの外周を加工する新工法「オービット加工」を活用する。「オービット加工は曲がった部分を回転させずに旋削加工ができ、ストレート部と同様の切削目を施せるため、より高品位な加工を実現できる」と五宝さんは強調する。

加工技術に焦点を当てる

メイラメディカル事業部の伊藤裕康主任(=写真左)と、中村留精密工業営業技術部の五宝純一さん(=同右)

メイラメディカル事業部の伊藤裕康主任(=写真左)と、中村留精密工業営業技術部の五宝純一さん(=同右)

メイラは自動車業界向けのボルト部品を量産する「輌機事業部」、航空・宇宙業界向けのボルト部品を手掛ける祖業の「航機事業部」、整形外科用インプラントのワークを加工する「メディカル事業部」の3部門で事業を展開する。

メディカル事業部が発足したのは、今から約30年前の1994年にさかのぼる。当時の日本の整形外科業界は欧米メーカーが欧米人の体形に合わせて製造したスクリューやプレートを輸入していたため、日本人にはサイズが合わないとの課題があった。「航機事業部で培ったチタン合金の調達網や加工技術のノウハウを生かし、日本人の骨格に合った整形外科用インプラントを作るためにメディカル事業部を立ち上げた」と伊藤主任は振り返る。

メイラは国産メーカーならではの小回りの良さを武器に、医者のニーズを迅速に具現化することで欧米メーカーとの差別化を狙う。そのため、医者や病院関係者向けに自社製品を紹介する目的で、医療系の学会やイベントにはこれまで数多く参加してきたが、メディカル事業部が持つ加工技術に焦点を当てる展示は今回のCZが初めてだという。伊藤主任は「CZは従来とは違ったアプローチで自社の技術を広くPRできる良い機会。加工実演を通じ、新たなビジネスにつながる何らかのヒントが得られれば」と期待を寄せる。

NEXT

「中部地方から激アツ!!!!を発信」
10月6日(月)公開

MECT2025の開催までついに1カ月を切った。次回は中部地方で開催するMECTならではの特色や展示会全体の見どころを紹介する。加えて、統計資料を交えながら今年の工作機械業界の景況感などの情報をお届けする。

バックナンバー

見どころ紹介
「MECTのここが激アツ!!!!」とは

本連載はMECT2025公式メディア「月刊生産財マーケティング」とのコラボ企画です。
MECT2025の出展者情報の他、恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)や会期中に開催されるセミナーといった激アツな見どころをお届けします。また本連載は月刊生産財マーケティングにも掲載されます。

生産財マーケティングイメージ
生産財マーケティング

ニュースダイジェスト社が発行する工作機械を中心にした設備材関連の専門誌。世界の業界情報や国内外の工作機械展レポート、最新の工業統計などを掲載する。

「月刊生産財マーケティング」について、詳しくはこちらから
上へ戻る