――足元の景況感はいかがですか。
わが社の今年4月~8月の連結受注は、前年同期と比較してほぼ同水準でした。米国トランプ政権の関税政策に世界中が振り回されていますが、わが社のビジネスはあまり落ち込んでいません。
-見どころ紹介-
2025.10.14
MECTのプレゼンス高まる
ヤマザキマザック(1B40)は日本の製造現場が抱える課題を解決するため、「工程集約」「自動化」「デジタル段取り」の3つのテーマを掲げてMECT2025に臨む。2機種の新製品を含む計7機種の展示を通じ、外需に比べ力強さに欠ける日本市場に攻勢をかけ、内需の拡大につなげる構えだ。山崎高嗣社長は「MECTは現場密着型の展示会として業界内で定着しており、MECTのプレゼンス(存在感)は回を重ねるごとに高まっている」と述べる。
わが社の今年4月~8月の連結受注は、前年同期と比較してほぼ同水準でした。米国トランプ政権の関税政策に世界中が振り回されていますが、わが社のビジネスはあまり落ち込んでいません。
米国市場では、航空宇宙産業や防衛産業などが活発です。また、トランプ政権の「ドリル・ベイビー・ドリル(石油を掘って、掘って、掘りまくれ)」とのスローガンを受け、最近はオイル関連の産業でも設備投資需要が拡大しています。特に大型の旋盤や複合加工機が好調です。現在は岐阜県美濃加茂市の美濃加茂製作所で生産していますが、今後の動向次第では一部機種の米国工場への移管も視野に入れています。
欧州ではけん引役のドイツが長いこと低落していましたが、ようやく底を打ち、明るい兆しが見え始めました。今年5月に発足したメルツ新政権による法人税軽減などの景気刺激策が今後、ドイツのお客さまの設備投資需要をどこまで喚起するかが注目されます。ドイツ経済が復調すれば、欧州全域でビジネスチャンスが広がるでしょう。
自動車をはじめ、金型関連や産業機械関連などのお客さまからの大型案件があり、想定以上に堅調に推移しています。また、中国ではヒューマノイド(ヒト型ロボット)の技術開発が盛況ですから、今後はヒューマノイドの関節軸などに組み込まれる減速機関連の精密部品の需要も期待できます。
連結受注とは動向が異なり、日本はやや低迷しています。わが社の今年4月~8月の内需は、前年同期と比較して1割ほど減少しました。トランプ政権の関税政策が心理的な悪影響を与えており、日本のお客さまは設備投資のタイミングを見極めている状況です。
航空宇宙産業が比較的堅調です。宇宙関連は今後も大きな伸びしろが見込まれる一方、民間航空機関連はコスト削減の一環で、最近は東南アジアやインドなどに仕事が流れている印象です。また、半導体製造装置産業や造船産業のお客さまからの需要も少しずつ増え始めました。
自動車メーカー各社の電動化戦略の方向性がだいたい固まってきました。そのため、今まで手控えられていた設備投資がいよいよ再開されるのではないかと期待しています。また、出遅れていた電気自動車(EV)の分野でも巻き返しを図るため、日系の自動車メーカー各社は最大市場である中国を念頭に車種のラインアップ拡充や生産体制の強化に取り組むでしょう。
日本の製造現場を取り巻く課題は人手不足やスキル不足、製造コストの高騰、デジタル化の遅れなど多岐にわたります。MECT2025ではこれらの課題を解決するため、「工程集約」や「自動化」、パソコン上でプログラミングなどの段取りを済ませる「デジタル段取り」といった3つのテーマを力強く訴求します。
日本初披露の2機種の新製品や、新型の発振器を搭載したテーブル駆動方式のファイバーレーザ加工機「STX-3015」を含む計7機種を出展します。この他、教示作業が不要で簡単に取り扱える協働ロボットセル「Ez LOADER(イージーローダー) 30」や、製造現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するソフトウエア「MAZATROL(マザトロール) DX」なども提案します。
一つはわが社のフラグシップ機である複合加工機の新製品「INTEGREX(インテグレックス) i-250 NEO(ネオ)」です。ミーリング主軸の切削能力を強化しつつ、環境性能も高めました。従来機種は自動化対応の一環で機械背面にツールマガジンを配置していましたが、「機械前面から工具を交換したい」とのお客さまからの要望に応え、新製品では前面から工具交換が可能な「フロントマガジン仕様」を採用しました。
2タレット仕様の対向2スピンドルCNC旋盤「QRX-50MSY SG」です。生産性が高く、EV向けの小物部品などの量産に力を発揮します。バーフィーダーやワークアンローダーといった自動化オプションも豊富に取りそろえています。
MECTは現場密着型の展示会として業界内で定着しています。従来は中部地方のお客さまがほとんどでしたが、近年は遠方からもわが社のブースに来場するお客さまが増えています。そういう意味では、回を重ねるごとにMECTのプレゼンスが高まっているといえます。MECT2025で披露する新製品の引き合いにも期待していますし、それ以外の機種についてもしっかりと商談に臨み、内需の拡大につなげたいです。かなり気合が入っています。
山崎高嗣(やまざき・たかし)
1987年米ザビエル大学経営学部卒業。90年ヤマザキマザック入社。96年ヤマザキマザックシンガポール社長。99年ヤマザキマザック常務営業副本部長、2000年営業本部長、01年専務、13年副社長、19年から現職。愛知県出身。1962年生まれの62歳。
MECTは2025年展で通算20回目の節目を迎える。見どころ紹介の最終回では、長年ファクトリーオートメーション(FA)業界に携わってきたTHKの寺町彰博会長にMECTの印象や思い出について語ってもらった。寺町会長へのインタビューを通じて、MECTの足跡や変化を振り返る。
本連載はMECT2025公式メディア「月刊生産財マーケティング」とのコラボ企画です。
MECT2025の出展者情報の他、恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)や会期中に開催されるセミナーといった激アツな見どころをお届けします。また本連載は月刊生産財マーケティングにも掲載されます。
ニュースダイジェスト社が発行する工作機械を中心にした設備材関連の専門誌。世界の業界情報や国内外の工作機械展レポート、最新の工業統計などを掲載する。
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