腕の見せどころは先端にあり

CZで展示するミニチュア鉗子。先端には微細なローレット形状が施されている
キャステムはMECT2025のCZで、医療器具である鉗子のミニチュアを展示する。鉗子は医療現場で血管をつかんで止血するのに使われたり、内臓を把持する場面などで使われる。はさみに似た形状をしており、持ち手部分を開閉したら先端のはさみ部分が連動して可動する仕組みだ。血管をつかんだり、内臓を持ちやすくするために、先端の内側にはローレット形状が施される。
ローレット形状とは滑り止めのためにワーク表面に付ける細かい凹凸状のひし形模様のことだ。CZで展示する鉗子は外科手術の中でも腹腔鏡手術で使われるものを精巧にミニチュアで再現した。本物のように持ち手と先端が可動し、会場では実際に触ることができる。
ミニチュア鉗子の最大の見どころは持ち手を動かすと連動して開く先端にある。ミニチュアサイズにしたことで先端に施されたローレット形状も非常に微細になっており、一つ一つのひし形部分の幅は0.231mmで高さは0.085mmと非常に小さい。先端部に直接ローレット形状の加工をしているわけでなく金型に加工し、それをワークに転写する。加工精度が非常に高いため、金型からワークに転写されたローレット形状には一切追加工をしない。
「鉗子をただのミニチュアにするだけならばそれほど技術力は求められない。ミニチュアに合わせて縮小したローレット形状の微細加工が一番の腕の見せどころ」と加工を担当した工機部工機開発課の三浦陽一課長は強調する。三浦課長は国家資格である機械加工技能士と金型製作技能士でいずれも特級を取得したキャステムきってのエース技能士だ。