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MECTのここが激アツ!!!!

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Vol.5

ミニチュアに技術詰め込む

CZで精緻な微細加工
を発見!

ミニチュア鉗子のイメージ

キャステム(広島県福山市、戸田拓夫社長)は医療器具である鉗子(かんし)のミニチュアをコンセプトゾーン(CZ)で披露する。特級技能士による微細な金型加工や独自の研究開発を積み重ねたワークの成形方法といった、これまでに同社が培ってきた技術を小さな鉗子に詰め込んだ。CZではミニチュア鉗子の展示の他、ミニチュア鉗子の構成部品の中で最も微細な形状の部品を作る金型の加工を披露し、技術力をPRする。

腕の見せどころは先端にあり

CZで展示するミニチュア鉗子。先端には微細なローレット形状が施されている

CZで展示するミニチュア鉗子。先端には微細なローレット形状が施されている

キャステムはMECT2025のCZで、医療器具である鉗子のミニチュアを展示する。鉗子は医療現場で血管をつかんで止血するのに使われたり、内臓を把持する場面などで使われる。はさみに似た形状をしており、持ち手部分を開閉したら先端のはさみ部分が連動して可動する仕組みだ。血管をつかんだり、内臓を持ちやすくするために、先端の内側にはローレット形状が施される。

ローレット形状とは滑り止めのためにワーク表面に付ける細かい凹凸状のひし形模様のことだ。CZで展示する鉗子は外科手術の中でも腹腔鏡手術で使われるものを精巧にミニチュアで再現した。本物のように持ち手と先端が可動し、会場では実際に触ることができる。

ミニチュア鉗子の最大の見どころは持ち手を動かすと連動して開く先端にある。ミニチュアサイズにしたことで先端に施されたローレット形状も非常に微細になっており、一つ一つのひし形部分の幅は0.231mmで高さは0.085mmと非常に小さい。先端部に直接ローレット形状の加工をしているわけでなく金型に加工し、それをワークに転写する。加工精度が非常に高いため、金型からワークに転写されたローレット形状には一切追加工をしない。

「鉗子をただのミニチュアにするだけならばそれほど技術力は求められない。ミニチュアに合わせて縮小したローレット形状の微細加工が一番の腕の見せどころ」と加工を担当した工機部工機開発課の三浦陽一課長は強調する。三浦課長は国家資格である機械加工技能士と金型製作技能士でいずれも特級を取得したキャステムきってのエース技能士だ。

加工プログラムにも工夫凝らす

ミニチュア鉗子の金型加工に使った碌々スマートテクノロジーの微細加工機「AndroidⅡ」。CZでは後継機の「AndroidⅢ」で加工実演をする

ミニチュア鉗子の金型加工に使った碌々スマートテクノロジーの微細加工機「AndroidⅡ」。CZでは後継機の「AndroidⅢ」で加工実演をする

会場に展示するミニチュア鉗子の金型加工には碌々スマートテクノロジー(東京都港区、矢野雄介社長)の微細加工機「Android(アンドロイド)Ⅱ」を使った。7年前に初めての微細加工機として同機を導入した。「以前はマシニングセンタで微細加工をすると、加工精度にばらつきがあり不安定だった。アンドロイドⅡならば加工精度にムラがなくなる」と三浦課長は語る。CZではアンドロイドⅡの後継機「アンドロイドⅢ」を使い、高精度な金型加工を披露する。

また、小径工具に強みを持つ日進工具のエンドミルを使い、その工具径はわずか0.1mmと非常に細い。まず、超硬素材の工具で加工を始め、立方晶窒化ホウ素(CBN)工具で仕上げ加工をし、最後に多結晶ダイヤモンド(PCD)工具で鏡面加工をする。超硬工具の摩耗が特に激しく、工具を何本も変えながら慎重に加工し続けるため、ローレット形状を加工し終えるために30時間は費やしたという。

精緻な加工をするために重要なのがワークのCADデータ、つまり3Dモデルだ。ワークそのままの大きさで3Dモデルを作り、そこから加工プログラムの設定をしようとしても、モデルが小さすぎるため、CAMソフトウエア内でわずかに誤差が生まれてしまう問題があった。

そこであえてワークの100倍の大きさで3Dモデルを作成して加工プログラムを設定し、それを100分の1のサイズに縮尺を変え、実際のワークサイズに合わせるようにした。これで3Dモデルが小さくても正確な加工プログラムを設定できるようになった。

微細加工を生かす成形

戸田有紀専務(=写真右)と工機部工機開発課の三浦陽一課長

戸田有紀専務(=写真右)と工機部工機開発課の三浦陽一課長

ミニチュア鉗子の部品製造で金属粉末射出成形法(Metal Injection Molding、MIM)を使う。MIMとは金属粉末とバインダーを混ぜ合わせ、金型に射出成形して最終的に焼結することで金属製品を製作する技術だ。キャステムは40年近く前からMIMに着目しており、研究開発を独自に進めて1991年には米国でMIMの製法に関する特許を取得した。「MIMによる成形品は薄肉かつ軽量との特徴があり、医療分野をはじめさまざまな分野で活用の場がある」と戸田有紀専務は言う。

キャステムが手掛けるMIM製法は、より微細な成形を可能にするため金属粉末とバインダーの材料を独自の比率で配合し、微細加工を施した金型へ射出成形する。これで微細薄肉形状の再現性が高いワークを製作できる。

同社が得意とするMIMや、ろうで型を作って金属成形をするロストワックスといった技術について、世代交代が進む顧客に知ってもらうためのウェビナーを今年から始めた。他にも技術に興味を持った顧客のもとへ赴き、出張展示会を開くなど技術のPRに力を注ぐ。CZでの展示はこれまでに培ってきた技術力をアピールできる機会と捉える。「これから高齢化社会が進めばますます医療の重要性が高まる。CZでの展示を医療分野におけるわが社の認知拡大のきっかけにしたい」と戸田専務は力を込める。

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「金型の可能性を発見!」
9月22日(火)公開

狭山金型製作所は金型を使った射出成型の実演をCZで披露する。同社が持つ金型の微細加工技術を生かし、射出成型するワークには人の血管をイメージした幅がわずか0.1mmのマイクロ流路2本と複雑形状の流路を盛り込んだ。また、微細金型による射出成形だけにとどまらず、協働ロボットを使った次工程の自動化も実現した取り組みに迫る。

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「MECTのここが激アツ!!!!」とは

本連載はMECT2025公式メディア「月刊生産財マーケティング」とのコラボ企画です。
MECT2025の出展者情報の他、恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)や会期中に開催されるセミナーといった激アツな見どころをお届けします。また本連載は月刊生産財マーケティングにも掲載されます。

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