【新人記者の視点】よく分からないけどなんか面白い

ジグを台にセットするロボット

あまりにも突拍子のないタイトルだけれど、率直にMECTの感想を言うとしたらこの言葉が一番ふさわしい。

出展企業のブースを回っていろいろな機械や工具などを見たり、担当の方から製品の話を聞く。しかし、FA業界に入ってたった半月の私にとっては目にしたり、耳にした言葉の半分くらいは暗号じゃないかと思った。頭の理解は追い付かなかったが、なぜか面白く感じる。

上画像はジグを器用に持ち上げて台にセットするロボットだ。ジグには穴が開いており、台には穴よりわずかに小さい径の柱がある。ロボットは穴に柱をきれいに通してジグを台にセットするのだ。気持ち良い。ずっと見ていられる。工作機械がワークを切削する時も同じ気持ちになる。

なぜ動くのか、どういう原理で削れるのかを私はほとんどわかっていない。でも面白い。工場見学に似たような感覚だ。理屈を分かっていなくても楽しめる。工作機械やロボットには不思議な魅力があると感じる。

BT40番の領域取り込む/ブラザー工業

BT30番クラスのMCで最大級の加工エリアを誇る「SPEEDIO W1000Xd1」

ブラザー工業(3A01)は、主軸テーパーBT30番の小型マシニングセンタ(MC)「SPEEDIO(スピーディオ) W1000Xd1」を披露した。
 X軸ストローク1000mm、Y軸ストローク500mm、Z軸ストローク300mmと、BT30番クラスのMCで最大級の加工エリアを誇る。同社は小間の最前面に実機を展示し、製品紹介のプレゼンテーションも交えてBT40番MCからの置き換えを提案した。星真常務執行役員は「加工エリアはBT40番MCとほぼ同等で、場合によっては今まで搭載していたジグをそのまま移行できる。BT30番MCは省エネルギー性能に優れるため、カーボンニュートラル(炭素中立)の達成にも一役買う」と語る。

「二律背反」満たす立形MC/スギノマシン

小型立形マシニングセンタ「SELF-CENTER SC-V30a」

スギノマシン(3A15)は、今年6月に発売した主軸テーパーBT30番マシニングセンタ(MC)「SELF-CENTER(セルフセンタ) SC-V30a」を提案する。
 700mmのX軸ストロークを確保しながらも、機械幅をわずか1440mmに抑えた。多数個取りで高効率な加工ができる他、電気自動車用の大型アルミ部品なども加工できる。「ストロークの長さとコンパクトさという二律背反の要素を満たした」と杉野良暁社長は自信を見せる。早送り速度や加減速を見直して非切削時間も短縮し、生産性も高めた。

微細精密向け5軸で市場に挑む/三井精機工業

「プレシジョンセンターPJ303X」の加工室

三井精機工業(3C19)は微細精密加工向けの5軸加工機「プレシジョンセンターPJ303X」を展示した。主軸の回転数は最大5万回転。機械構造を工夫した上で独自の熱変位の補正機能を標準搭載し、主軸やヘッドの熱変位を抑える。繰り返し精度は、3つの直行軸のいずれも1μm以下を保証する。

担当者は「わが社は、テーブルが旋回する形式の5軸加工機が得意。旋回テーブルまで内製して独自の調整を施せる。これまで培ったノウハウを全てつぎ込んだ自信作」と胸を張る。

ブローチ加工の新提案/ホーン

ブローチング工具をはじめ超硬溝入れ工具を豊富にラインアップする

ドイツに本社を構えるホーン(2A03)は、ブローチング加工用工具で新たな提案をする。通常は専用のブローチ盤と工具であるブローチを使用するが、ホーンが提案するのは、旋盤でブローチ加工ができるブローチング工具だ。

ホーンの特徴は、小径工具で確固たる評価を確立し、高剛性であること。IZUSHI(2A09)が代理店を務めるが、HORNグループの玉置紅実主任は「国内在庫も十分で即納体制を整えてある。中部支店の刈谷テクニカルセンターではテスト加工の体制も整える」と話す。ブローチ加工の工法転換を検討する来場者は一見の価値があるだろう。

他に各種のギアスカイビングカッターなども展示する。

傷の深さまで見える検査機/JUKI

傷の深さまで検査できるハイブリッド検査機 「HE1000」

MECT初出展のJUKI(1A24)は、2次元(D)カメラによる外観検査に加え、3Dレーザーで傷の深さまで検査できるハイブリッド検査機 「HE1000」を披露した。

照明の照射角度を最適にしながら独自の2Dカメラで高速撮影した後、XTIA(クティア)社の光コム技術を採用した3Dセンサーで10μmレベルの傷まで検査できる。自動車や船舶、建設機械のエンジン部品や、金属の機械部品など幅広い用途を見込む。

会場では、自動車エンジンのシリンダーブロックとの接続部、シリンダーヘッドの端面を約1分で検査するデモを見せた。「カメラとレーザーを融合した検査機は業界初。従来は目視や、複数の装置を使って時間がかかっていた検査を自動化し、検査時間を大幅に短縮できる」と説明員は話す。

工具の良さはワークが語る/日進工具後藤弘治社長

日進工具の後藤弘治社長

景況感も新型コロナウイルス感染状況も、本当に良いタイミングで展示会を迎えられた。まだ会期3日目だが、すでに事前の目標を超える成果を得ている。引き続きアピールしたい。

今回は加工分野や用途ごとにブースを区切って展示した。さらに各工具で加工したワークも一緒に展示した。やはり、工具の性能や特徴は加工したワークに現れる。ワークも展示することで、工具の実力を実感できる。ぜひ、工具だけでなくワークも来場者のプロの目で見てほしい。

機上測定も工程内計測も一連で自動化

MECT2021でのレニショーの展示

レニショー(2D20)は、小型MCへのワーク供給から加工前のワークの位置検出、加工後の機上測定、搬出後の工程内計測を一連にしたロボットシステムを展示した。

特に機上測定では、一般的な接触した位置の測定だけでなく、ワークに沿わせて測る「倣い測定」もできる。連続した計測データを取得でき、変位量の推移も簡単に分かる。

切れ味鋭い7色の小径ドリル/サイトウ製作所

サイトウ製作所の新製品ルーマドリル「ADR-DLC/ADRL-DLC」

サイトウ製作所(2A07)は、今年4月に発売した小径のルーマドリル「ADR-DLC/ADRL-DLC」を展示した。ダイヤモンドに模した炭素のコーティング(DLCコーティング)を非常に薄く施した。切れ刃の厚さが厚くならないため、切れ味はコーティングの無い工具と同等ながら、溶着しにくい工具表面を実現した。

斉藤之宏専務は「一般的なDLCコーティングでは黒光りするが、この製品は非常に薄くできたため7色に光沢する。ぜひ現物を見てほしい」とアピールする。

「サガネ係長…」を積極PR/日進製作所

ホーニング盤メーカーの日進製作所(3D16)はモノのインターネット(IoT)を導入したシステム「サガネ係長のIoT」のPRに躍起だ。
 「サガネ係長のIoT」は生産ラインの不稼働要因をリアルタイムで把握し、現場で取り組むカイゼン活動の質と量を高め、生産性を向上できる。現場を管理する係長目線で、業務効率や生産性の改善を支援するシステムだ。
 設備のメーカーや新旧を問わず、設備の様々なデータを集めて稼働状況を管理できるのが特徴。昨年の日本国際工作機械見本市(JIMTOFオンライン)で公開したが、今回のMECTでは、来場者に直にアピールした。
 担当する奥村大課長は「国内の設備投資需要が本格化する前に、知名度を高めたい」と意気込む。