上画像は展示会の紹介でよく見る構図だ。この写真はどう撮っているだろうか。会場に設置されているカメラで遠隔撮影? ドローンの空撮?
ではなく、記者や報道関係者が会場のキャットウォーク(狭い通路)で撮っている。他の会場ではどうかわからないが、ポートメッセなごやでは、はしごを登って撮影場所へ向かう。私がはしごを登っている間に、下から別の報道関係者が登ってくる。ここで落ちたら大変なことになるぞ、という人命が懸かったプレッシャーの中、登った。
そのプレッシャーを越えた先に見えた景色は格別にきれいだった……と言いたいところだったが、私はどうしようもなく高所恐怖症である。ここから落ちたら問答無用で死ぬじゃん…と思いながらも、雑念を何とか振り払いながら撮影した。一緒に登って撮影していた上司は、柵から腕を伸ばして良いアングルを探りながら撮っていた。しかしそんなまねは私にはできなかった。だって怖いんだもん…。
3号館の撮影はビビりながらも何とかできた。次は1号館の撮影だ。上司や先輩から「1号館は3号館よりもやばい」と聞かされていた。何がどうやばいのかはあえて突っ込んで聞かなかったが、嫌でも想像できる。
1号館に着いたらまたはしごでキャットウォークに登る。3号館のはしごは少し角度が付いていたが、1号館のそれは完全に垂直だった。無心で登った。景色を見たら進むことも戻ることもできなくなる。
登った先に見えた景色は格別にきれいだった……と思う間もなく「1号館はやばい」の意味を理解した。足場が側溝の鉄製ふたのようになっており、スカスカなのである。下の景色がはっきり見える。おまけに足場と柵の間に妙な隙間がある。「ほんまに落ちるやんこれ…」と結構本気で死を想像した。どうしようもない恐怖に足がすくんだのはこれが初めてかもしれない。スイスイと足場を進んでいく上司を眺めることしかできなかった。