【新人記者の視点】展示会の感動と新人記者の特権

展示会3日目が始まった。過去最大規模で開催した今回展も今日が折り返し地点。怒濤(どとう)のごとく流れる時間と人の群れに圧倒され続ける。

だが、自然と疲れは感じない。出展者各社が一押しの製品を展示し、群雄割拠ひしめき合う姿は、まさに圧巻の一言。色とりどりに花を咲かすブースに、心を打たれる。

もしかするとこの感動は、新人記者だからこそ味わうことができる「特権」なのかもしれない。だとすれば、私はこの貴重な経験を、いつまでも忘れずにいたい。

巧みなワーク加工を実演/コンセプトゾーン

3号館の特設会場で実施する主催者企画展示ゾーン(コンセプトゾーン)では、「驚きのスゴ技」をテーマに、アクリル素材の微細加工やファインセラミックスの研削加工、複雑な5軸加工といった高い加工技術を紹介している。

コンセプトゾーンでは、それぞれの技術を生かしたサンプルワークだけでなく、工作機械を巧みに使い、実際にワークを加工する様子も見ることができる。“門外不出”の加工技術の一端を体感しよう。

滑らかに削られたサンプルワーク/ユニオンツール

ユニオンツール(2B16)は工具とともに、トヨタ合成とコラボで作成したサンプルワークを展示した。加工に使用したエンドミルはMECTにあわせて発表した新製品「CWLB」だ。CWLBの特徴である先端微小フラット形状で、長寿命化や鏡面性の向上を実現した。加工面の滑らかさが目を引く。

【注目のサンプルワーク】MECTに美術館/安田工業

安田工業(1A34)が5軸マシニングセンタで削り出した彫像を3体展示し、ちょっとした美術館と化している。著名な「ミロのビーナス」「サモトラケのニケ」「自由の女神」の3体だ。同社が海外での展示会向けに製作したもの。国内外で来場者に「刺さる」ポイントが違うのも興味深い。

ここでクイズを2つ。

①「ミロのビーナス」と「サモトラケのニケ」を所蔵する美術館はどこ?

②「自由の女神」の制作者は誰でしょう?

 

答え

①ルーブル美術館

②フレデリク・バルトルディ

ケレ装着も自動で/松本機械工業

松本機械工業(3C22)は円筒研削盤向けの自動化提案に力を入れている。その一環で、両センター加工の研削ワークに自動でケレ(回し金)を装着する専用装置を出展した。自社製のパッケージ仕様のロボットシステム「Smart Terrace(スマートテラス) AIO」と組み合わせれば、ケレの着脱からワークの着脱まで自動化できる。あらかじめ複数のサイズのケレを用意すれば、径違いのワークでもケレの自動装着が可能だ。桑本正信営業本部長は「従来はケレを手作業で装着していたが、両センター加工においても自動化ニーズが高かったため、ケレ自動装着装置を開発した」と述べる。

【注目のサンプルワーク】加工技術をフル活用したダストボックス/トルンプ

一見するとただのごみ箱に見えるが、トルンプ(1D11)のベンディングマシン「TruBend Center(トルベンドセンター) 7020」の加工技術を最大限に活用して作ったサンプルワークだ。同製品は複雑形状の曲げ加工を実現する加工機で、4方向からそれぞれ350mmの高さまで曲げられる。

 プレスブレーキ課の黒木亮チームリーダーは「ヘミング曲げ加工した部分をさらにR曲げ加工するなど、自由度が高い。ブースで1時間に1回ほどの頻度で、ダストボックスなどのデモ加工を実演している」と説明する。

【今更聞けない?】高精度微細加工ってつまり/碌々スマートテクノロジー

微細加工とは、金属や樹脂などに非常に細かい加工を行うことの総称だ。その細かさや精度に明確な基準はないが、微細加工は非常に高い精度が求められる特別な加工であり、専用のマシニングセンタやレーザ加工機が求められる。

碌々スマートテクノロジー(1A34、コンセプトゾーン)はそんな微細加工を極める企業だ。その特別さゆえに担当者が「工作機械業界のルイ・ヴィトン」だと語る同社の高精度微細加工機は、0.5mmのシャープペンシルの芯にも難なく穴をあける。同社ブースやコンセプトゾーンに足を運び、そのスゴさを確かめてほしい。

「世界最小」のプローブ/レニショー

レニショー(3A02)は直径が24mm、長さが31.4mmしかない無線信号伝達式プローブ「RMP24-micro(マイクロ)」を国内初披露した。欧州市場向けには今年9月にドイツで開催された工作機械見本市「EMOハノーバー2023」で一足先に展示しており、今回のMECTで日本市場向けに大々的に発表した格好だ。担当者は「工作機械用プローブの中では世界最小。日本ではどういう風に受け入れられるかを今回のMECTで確認したい」と語る。

【新人記者の視点】大きなものから小さなものまで

プシュッ!という音の先に見えるのは?

MECTの会場には人の背丈の倍ほどの高さのある大型のマシニングセンタから、微細加工用の小さな工具まで多種多様な大きさの製品がブースに並ぶ。

第3展示館で見つけたのは金属加工油などを製造、販売するサンワケミカル(3D35)の展示。切削油の従来品とオイルミスト対策品をクリアケースの内部に吹き付けていた。差は一目瞭然。油の粒子を大きくし油の落下速度を早めることでミストが軽減され、ケース内部がクリアに見えるそう。

会場内で液体の粒子の大きさまでこだわったものが見らるとは思わず、うれしい発見だった。

30番MCの加工実演に注目/ブラザー工業

ブラザー工業(1D24)は、主軸テーパーBT30番の小型マシニングセンタ(MC)「SPEEDIO(スピーディオ)シリーズ」から6機種を出展している。

中でも目玉は、X軸ストロークが1000mmの小型MC「W1000Xd2」。広い加工エリアを生かし、多数個取りした鉄系ワークを加工するデモを定期的に実施している。また、スピーディオシリーズ初の横形MC「H550Xd1」も展示しており、電気自動車(EV)のインバーターケースを模したアルミダイカスト製ワークを削るデモにも注目だ。担当者は「BT30番の小型MCの多彩なラインアップを、加工実演と共に紹介したい」と話す。